飲食店を開業するのにあたって「個人と法人、どちらでで開業するのがいい?」というのも一つ悩むところ。実際双方にメリット・デメリットがあり、一言で「こちらがいい」と一概に言いきれません。ですが一般的に言うと8割~9割は個人事業主として開業する方が多く、開業のタイミングに限っては「個人事業主」として開業するほうが、メリットを受けやすく有利と言えるでしょう。ここではそのメリットとデメリットを比較しながら、なぜ個人事業主で開業する方が有利と言えるかを解説していきます。
目次
個人事業主が飲食店を開業する場合のメリットとデメリット
メリット
開業費用を抑えられる
法人を設立した場合、株式会社であれば最低 25 万円、合同会社でも 最低 6 万円はかかる開業費用が、個人経営の場合は全く不要です。
「融資審査に不利?」ということはない
「法人を設立した方が日本政策金融公庫の融資審査上がうけやすいのでは?」と考える人は多いと思いますが、それは違います。実際審査材料に個人か法人かという部分はほとんど関わってきません。ただ違いがあるとすれば融資時の責任です。日本政策金融公庫の「中小企業経営強力化資金」で無担保・無保証で融資を受けたとします。その際個人であれば事業がうまくいかない場合の融資責任は個人で背負わなければならなりません。一方法人であれば、法人として自己破産するという形がとれますので、生活が圧迫されるほどの影響はないでしょう。
融資申請までがスピーディー
融資申請をする際に、法人であれば登記簿謄本など取得したり諸々設立の準備を終えて、ようやく法人化した段階でないと融資申請ができません。対して個人事業主はそういった手続きが少ないため融資申請までのスピードはかなり早くなります。
節税の面で大きなメリットがある
個人事業主として開業した場合1年超消費税の免除があります。また資本金1000万円以上の基準期間がない法人の場合でも、2年間の消費税免除があるのです。そうすると個人事業主で開業して後、消費税の課税が始まる年度の少し前に法人化することで約3年間の消費税が免除されることになります。ただここで注意するのが個人事業主でも資本金1000万円以上にすると消費税が初年度から課税されるので、1000万円以下に資本金を抑えるよう気を付けておきましょう。つまり、個人事業主として開業し初年度の資本金を1000万円以下に抑えて、年度が替わる前に法人化する、という流れがおすすめです。また節税面でいうともうひとつ確定申告の方法もポイントになってきます。「青色申告」「白色申告」という2種類の申告方法があるのは聞いたことがあると思います。法人であれば「青色申告」が必須になりますが、個人事業主の場合はいづれかの方法を選んで申告することになります。ここで少しその各申告方法についてのメリットデメリットをご紹介していきます。
- 「青色申告」のメリット
- 最大65万円の特別控除か受けられる
- 3年間は赤字の繰越が可能
- 家族への給与に関しても必要経費として処理できる
- 30万円未満であれば固定資産を一括で経費として処理できる
- 自宅兼オフィスとしている場合、家賃や電気代の一部などを経費として処理できる
- 事業経費の明細がわかりやすいため融資を受けるハードルが下がる
- 「青色申告」のデメリット
- 事前に「所得税の青色申告承認申請書」の申請が必要 ※その年の3月15日までか開業から2ヵ月以内に管轄の税務署へ提出
- ・複式簿記が必要になり、提出書類も多いため税理士など専門家への依頼も検討しなければならない
- 以上が「青色申告」のメリットとデメリットとなります
- 「白色申告」のメリット
- 事前の「所得税の青色申告承認申請書」の申請が不要
- 単式簿記での帳簿付けができ、提出書類も少なくて済むので比較的手間がかからない
- 「白色申告」のデメリット
- 65万円の特別控除が受けられない
- 赤字の繰越ができない
- 事業経費の明細がわかりにくいため融資を受けずらくなる
「青色申告」と「白色申告」それぞれのメリット・デメリットをまとめてみました。これを踏まえると個人事業主として開業する場合にも、手間こそかかりますが「青色申告」がおすすめです。当然個人で複数簿記の管理をしたりするのに高いハードルをかんじる方もいらっしゃると思います。そんな時は税理士などに相談してみるのもいいでしょう。飲食店であればその分野に強い税理士をネットなどで探してみるのもいいでしょう。
非課税経費に上限がない
法人の場合会食などの交際費は資本金 1 億円以下で年間 800 万円という上限があり、それ以上の金額は全額課税されますが、個人経営の場合は全額を収入から控除できます。
社会保険への加入が強制でない
社会保険の厚生年金、雇用保険など法人であれば加入は強制なので、費用や計算の雑務が発生しますが、個人経営の場合は任意です。
経営する上で意思決定がシンプル
法人であれば稟議を通すのに役員会議などが必須になってきますが、 個人の場合は自分の意志ですぐに決定できるので、スムーズな経営ができると言えます。
デメリット
損害が発生した場合の補償は個人の財産
飲食店経営などで損害が発生した場合、個人の財産を費やしてすべて自分 1 人で補償しなければなりません。法人の場合であれば法人資産の範囲の賠償になるので経営者個人の財産を費やすことはありません。
経営者が社会保険に加入できない
個人事業主は厚生年金に加入できず国民年金への加入となります。また健康保険も国民健康保険には加入となるので法人の場合には保証のある傷病手当などがありません。
法人として飲食店を開業する場合のメリットとデメリット
メリット
税金上控除できる項目が多い
収入から控除できる項目が多く税金上優遇されている点です。また赤字を翌年以降に繰り越せるので翌年に黒字が出た場合も節税することができます。
個人の支払いも会社経費で処理できる
例えば出張旅費や携帯電話代、車代などを全額経費で処理したり、家賃支払いの9割以上を会社負担にするなど、経費と処理できるものが個人事業主に比べて多くなります。
共同経営上のトラブルなどリスクが少ない
飲食店を親族や友人と経営する場合に正式な契約を交わさない場合はトラブルの原因になります。法人の場合であれば明確な契約内容に応じた分配をすればよいためトラブルのリスクは低いでしょう。また既に定職についている奥様に給与を払う際にも、奥様を役員にして「役員報酬」という形にすることで経費として処理することができるのも知っておきましょう。
経営を引き継ぎやすい
個人経営では名義が変わるためそれまで得た許可などはすべて取り直しになります。法人であれば役員の変更登記をするほかには手続きなどは不要なので、引退する際のなどの引継ぎ負担は少なくなります。
求人に強い点
同じ求人広告でも、個人経営の飲食店より法人経営の飲食店の方が求職者も安心できるでしょう。また法人の場合社会保険への加入が必須なので、ハローワークの求人を出す場合でも新たな手続きや費用が不要です。
デメリット
設立に費用がかかる
先に説明したように法人を設立した場合、株式会社であれば最低 25万円、合同会社でも最低でも 6万円の開業費用が必要です。
青色申告が必須
「個人事業主が飲食店を開業する場合のメリットとデメリット」でお話したように、法人であれば「青色申告」が必須となり、複数簿記や提出書類の手間が必ず発生します。が、本記事では個人事業主で開業した場合でも「青色申告」を推奨していますので、この場合デメリットというよりかは「白色申告」より手間がかかる、と参考程度に捉えてください。
まとめ
さて「飲食店の開業は個人がいい?法人がいい?」について説明させていただきました。結論としましては開業のタイミングに限っては個人事業主の方が有利な部分が大きいといえるでしょう。開業後、所得や従業員の状況もみながら、「1年後」尚且つ「資本金1000万円」などを目安に法人化を検討してみてください。
↓↓↓ こちらもよろしく! ↓↓↓
コメントを残す