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#5 飲食店を閉店するときに必要な手続きや届け出

飲食店の開業時には行政機関など関係各所に手続きをしたかと思いますが、閉店時にも同じようにいくつもの手続きが必要でとなります。今回は提出期限別に並べたタイムラインも確認しながら各手続の期限やワンポイントアドバイスをまとめていきますのでぜひ参考にしてください。

届け出一覧

保健所

廃業届

閉店する店舗のある管轄の保健所へ廃業日から10日以内に提出します。書類形式などは管轄の保健所によって異なります。保健所や自治体のホームページから書類のダウンロードもできるので事前に確認しておきましょう。

飲食店営業許可書の返納

開業時に取得した食品営業許可証を確認し、廃業日から10日以内に返納をします。もし紛失してしまった場合には、紛失届の手続きが必要な場合や、廃業届のみで対処してくれる場合など管轄の保健所によって対応が異なります。

消防署

防火管理者解任届出書

店舗の閉店を防火管理者の解任日として解任の届け出を提出します。管轄の消防署で届け出の用紙を取得することができます。提出期限などはありません。また開業時に提出した防火対象設備使用開始届に対しては特に提出する書類はありません。

警察署

深夜酒類提供飲食店営業の廃止届出書

開業時に深夜酒類提供飲食店営業開始届出書を提出している店舗は、管轄の警察署へ理由などを記した廃止届出書店を閉店した日から10日以内に提出します。書類は下記URLの警察署ホームページから入手できますのでご覧ください。
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetsuzuki/fuzoku/style/close.html

風俗営業の返納理由書

開業時に風俗営業許可を得ている店舗は、管轄の警察署へ返納理由書とともに営業許可証を返納します。こちらも閉店から10日以内が提出期限となります。これを怠ると30万円の罰金に処せられる可能性もあります。

税務署・税事務所

個人事業の開業・廃業等届出書

所轄の税務署へ閉店日から1ヶ月以内に提出します。都道府県によって提出期限は異なりますので、事前に問い合わせて確認しておきましょう。

消費税の事業廃止届出書

消費税の課税事業者の場合に所轄の税務署に提出しましょう。

給与支払い事務所等の開設・移転・廃止届出書

従業員を雇っていたり、家族が青色専従者であったりした場合に、所轄の税務署へ閉店から1ヶ月以内に提出しましょう。

所得税の青色申告の取りやめ届出書

青色申告で確定申告を行っている場合、店舗を閉店する年の翌年3月15日までに所轄の税務署へ届け出をしましょう。届出を怠ると追徴課税などの通知がくる場合もあります。

公共職業安定所

雇用保険適用事業所廃止届

雇用保険に加入している場合、廃業日から5日以内に提出します。

雇用保険被保険者資格喪失届

雇用保険に加入している場合、廃業日から10日以内に提出します。

雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険に加入している場合、廃業日から10日以内に提出します。3枚複写式の専用用紙で、近くの公共職業安定所の窓口か、HPからPDFでダウンロードして取得してください。参考までに東京労働局HPのURLを載せておきますので参考にしてみてください。
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/_113387.html

日本年金機構(年金事務所)

雇用保険適用事業所廃止届の事業主控

雇用保険に加入している場合、管轄の年金事務所へ雇用保険適用事業所廃止届の事業主控のコピーを閉店日から5日以内に提出します。

健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届

健康保険に加入している場合、管轄の年金事務所へ閉店日から5日以内に提出します。いずれも期限が短いので、閉店の目途が立った段階で事前に保険の加入状況をチェックしておくようにしましょう。

労働基準監督署

労働保険確定保険料申告書

労働保険に加入している場合、閉店日から50日以内に提出しましょう。管轄の労働基準監督署だけでなく、都道府県労働局や日本銀行でも提出することができます。従業員に関わる手続きはその配偶者などにも影響が出てしまうので、怠らずにしっかりと行いましょう。申告書は管轄の労働基準監督署から郵送してもらえるので、見当たらない場合はすぐに問い合わせてみてください。

法人の手続き

「解散」と「精算」について

法人経営の飲食店を閉店(法人自体を廃業)するための手続きとして大きく「登記解散」「登記精算」という2つの作業があります。「登記解散」は、法人登記の抹消、または法人格の消滅と理解しておくといいでしょう。「登記精算」は、「清算人」が債権の回収と債務の返済をし、残った財産を分配することです。この二つの作業が終わって2週間以内には、「解散と清算人の登記」と「精算決了の登記」を行う必要があります。法人の形態によって、提出書類が異なりますので、法務局ホームページの「商業・法人登記の申請書様式」から最新のものをダウンロードし確認をしてください。以下、法人の形態別に必要な申請書を説明していきます。

法人の形態が株式会社の場合

  • 株式会社解散及び清算人選任登記申請書
  • 株式会社精算決了登記申請書

“株式会社とは株式を発行することで資金を調達し事業活動を行う会社です”

法人の形態が特例有限会社の場合

  • 特例有限会社解散及び清算人選任登記申請書
  • 特例有限会社精算決了登記申請書

“2006年に有限会社法が廃止されて以降は有限会社を設立することはできません。それ以前に設立した有限会社は株式会社へと変更されましたが、中には特例有限会社に分類される会社が存在します”

法人の形態が持分会社の場合

  • 合同会社解散及び清算人選任登記申請書
  • 合同会社精算決了登記申請書

“「合同会社」「合名会社」「合資会社」を併せて持分会社といいます”

解散公告

会社法499条、660条により、株式会社並びに合同会社は、債権者に対する公告として2か月以上、官報へ解散公告を出さなければりません。また合名会社並びに合資会社については、会社法670条により、解散日から2週間以内に、官報へ解散公告を1か月以上出すことになっています。債権者への個別公告も必要となるので心得ておきましょう。

解散確定申告

解散日から2か月以内に提出しましょう。精算確定申告残余財産確定日から1か月以内(残余財産が確定した事業年度)に提出しましょう。

契約の解除・スタッフ・顧客への対応

1 借入れがある場合の対応

閉店時に残っている事業の借入金は事業主個人の借金となり、個人として返済する義務があります。預金等の資金がもし十分でない場合債権者との交渉が必要になります。仮に自己破産をした場合でも、裁判所に支払う実費が約3~50万円、弁護士費用が約30~50万円の程の費用がかかります。日本政策金融公庫や金融機関から融資を受けている場合に関して。返済期間中に閉店せざるを得ない時は、仮に、月々の返済を今まで通り続けることができたとしても、必ず金融機関の窓口へ状況を報告するようにしてください。

2 リース品・レンタル品の返却と業者への精算

「リース」と「レンタル」の違い

リース:リース業者に新品で購入してもらったものの代金を長期に渡って分割払いしている状態であり、返却後も支払いの義務は残る。
レンタル:機器を契約期間中に使用料を払って借りている状態であり、必要がなくなればその段階で契約を打ち切り返却をする。

返却と業者への精算

ビールサーバーやおしぼりウォーマーなどのリース品やレンタル品は基本的に全て返却します。ただ先程述べたようにリース品に関しては支払いが終わっていない場合は返却後も返済の義務は残るので注意しましょう。リース品の所有権はリース業者にあるため、当然リース品を第三者に転売して返済資金にあてることなどはできません。居抜き店舗で売買する際などに、リース品を残して居ることを報告せずに内装や厨房機器の売買契約を交わして後々トラブルになることもあります。返却・支払いの流れなどはリース会社にしっかり確認しておきましょう。

3 物件貸主と不動産管理会社の解約

解約予告

賃貸借契約をしている店舗の場合は、解約の手続きが必要となります。契約書ではほとんどの場合、解約時に解約通知の提出が必要とされています。店舗型賃貸の場合には長い場合で3カ月前には解約予告が必要となります。解約通知は貸主や不動産会社に書面で提出します。解約予告期間までに速やかに提出しましょう。解約予告をしてから実際に退去するまでの期間も家賃が発生しますので注意するようにしましょう。

原状回復

店舗の賃貸契約書では、スケルトン状態に戻してから退去する原状回復義務が盛り込まれているケースが一般的です。しっかりと退去時まで作業が終わるように日時を逆算してスケジュールをたてましょう。店舗の原状回復とは内装や設備も取り除いた状態を指します。契約内容によってはルールが異なることもあるので、賃貸契約書を確認し、貸主や不動産会社に確認しておくようにしましょう。

4 電気・ガス・水道などインフラ関係や店舗総合保険の解約

電気、ガス、水道などのインフラ関係の解約は電話で解済んでしまうので簡単なぶん意外と忘れてしまいがち。廃業後まで契約が継続されてしまっていて請求がこないように気を抜かずに対応しましょう。

5 仕入れ業者との解約

閉店の意向を早めに伝えることで、未払い分の支払いなど相談に応じてくれる例も。真摯に事情を説明することが信頼関係においては大切です。

6 従業員への解雇通告

労働基準法において解雇の30日以上前には通告する義務が定められています。従業員の準備期間に配慮し、閉店が確定したらできるだけ早急に伝えるのがよいでしょう。

7 顧客へ閉店のお知らせ

閉店の挨拶は重要です。特に他にグループの姉妹店などがある場合にはここでの対応がグループ全体への印象にも関わります。張り紙やHP、SNSなどを使って閉店日も含めて真摯に告知しておきましょう。閉店イベントなど来店した方へのサービスがあると最後にもう一度訪れてもらう良いきっかけになるでしょう。

まとめ

これまで頑張ってきた自分の店をたたむことは精神的にも辛いタイミングではありますが、やるべき手続きはまってはくれません。スケジュール管理システムやカレンダーを有効に使い、予想外のトラブルが起きても期日内に手続きを済ませられるスケジュールと対策を準備しておきましょう。各申請書や用紙は各機関のホームページでダウンロードできるものもあり、一度確認することでわざわざ出向く手間を省くことができます。ホームページ上には記入例や説明も記載されていることが多いので参考にてみましょう。とにかく初めての作業がほとんどだと思います。疑問点や確認事項は遠慮なく、早めに各機関や業者に確認しておくようにしましょう。

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