飲食店を経営するにあたってメニューの価格設定は悩んでしまうところです。すでに開業しているオーナーさんでも、売り上げはあるのに利益がなかなか残らないなんて方もいらっしゃるかもしれません。今回は原価率とは何か、業態ごとのポイントについても解説していきたいと思います。また経営するうえで意識したい粗利率についても触れ、適正な価格設定の仕方について紹介をしていきます。
目次
「原価率」とは?どのように考えたらよいのか
原価とは商品を作るためにかかる費用のことであり、飲食店であれば料理を作るための材料費(食材)のことを意味します。「原価率」とは、販売価格のなかで原価が占める割合のことを指し、売上から利益を出すためにもきちんと考えておきたい数値です。一般的に原価率は30%が目安と言われています。これは人件費、光熱費などのその他の経費とのバランスを考えて利益を出すとなると、材料費にかけられるのは30%ぐらいが適正と言われているからです。
原価率の計算方法は?
実際に原価率を求めるには、以下の計算式を使用します。
原価率=原価÷販売価格×100
例えば、300円で仕入れた食材で作った料理を600円で販売すると、
300(原価)÷600(販売価格)×100=50(原価率)
という計算になり、原価率は50%となります。原価率が50%ということはその他の経費と利益が残りの50%に含まれることとなり、原価率が高ければその分利益が出にくくなります。このように原価率が高すぎる場合は、販売価格を変更する、原価を抑えるなど考えなくてはなりませんね。
ちなみに原価はそのままで販売価格を1000円に変更すると、
300(原価)÷1000(販売価格)×100=30(原価率)
という風に、ちょうど原価率が30%になります。
原価率を50%から30%に下げられれば利益も出すことができますね。
適正な原価率とは?FLコストについても考える
では、適正な原価率を設定するためにはどのような点を考慮したら良いのでしょうか?
あらゆる面から設定の仕方を考えてみましょう。
「FLコスト」とは?
飲食店を経営するうえで考えておきたい経費に、「FLコスト」があります。FLコストとは、原価のフードコスト(FOOD)と、人件費のレイバーコスト(LABOR)の二つの経費を合わせて考えることです。例えば、人件費があまりかからない店舗であれば、その分を材料費にまわせるという風に考えられますね。また、売り上げに対するFLコストの割合を「FL比率」といいます。このFL比率は店舗の経営状態を表し、売上のうちのFL比率が60%以内に収まっていることが理想の割合といえるでしょう。FL比率も考えながら原価率を設定しましょう。
ドリンクメニューの原価率について
一般的にドリンクメニューはフードメニューに比べると原価が安く、原価率も低くできるため利益を出しやすいと言えます。ドリンクの方で利益を出せればフードの原価にまわすことができますね。ドリンクメニューを上手に取り入れて、フードメニューとのバランスを考えて原価率を設定することが利益率を上げることに繋がりますね。
メニューごとに原価率を変える
ここまで原価率の目安を30%と説明をしてきましたが、全てのメニューの原価率を30%に統一することが適正とは限りません。前項「『FLコスト』とは?」や「ドリンクメニューの原価率について」でも触れたように、他の経費やメニューと合わせて原価率を設定することが重要であり、メニューごとに原価率が異なっても良いのです。もし自店で強くおすすめしたい看板メニューがあるならば、食材にもこだわりたいはずです。しかし原価率30%にとらわれすぎて、販売価格が高くなってしまえば手が出しにくいメニューになってしまいます。反対に原価を抑えようと安価な食材で済ませることになると、せっかくの自店のメニューの良さを損なってしまう可能性もありますよね。原価が安く利益を確保できるメニューをしっかり用意しておけば、看板メニューの原価率が高くなってしまってもトータルのバランスがとれていれば問題ありません。看板メニューはお店の強みであり集客にも繋がるので、お金をかけたいところですよね。このように、全てのメニューの原価率を一定にする必要はありません。原価率が高くなってしまうメニューがあってもドリンクメニューや原価が安く済むメニューで利益率を上げることで、全体的にバランスがとれるように原価率を設定しましょう。
各業態ごとの原価率の特徴
飲食店の原価率は業態によっても異なってきます。ここでは各業態ごとの特徴を解説していきますので、ご参考にしていただければと思います。
ラーメン店の場合
ラーメン店の原価率は30%ぐらいと言われています。店舗の仕入れる食材によって原価は異なりますが、原価率は30%前後が一般的です。麺、スープの種類、具材の玉子やチャーシューなど、こだわりによっては原価が上がってしまいますが、ラーメン店は比較的他の業態よりも人件費が抑えられるのでFL比率でバランスがとれていれば良いでしょう。また、回転率も高いところもメリットであり、アルコールメニューなども取り入れることで客単価のアップにも繋がりますね。
カフェ・喫茶店の場合
カフェや喫茶店の原価率は25~35%ぐらいと言われています。ドリンクの原価率は低い為、食事メニューよりもドリンクメニューの比率が高いほど全体の原価率を抑えることができ、利益率も高くなります。しかし、落ち着いた空間や時間を目的とするカフェや喫茶店は求められるサービスクオリティも高くなってしまいます。そのため他の業態に比べると人件費が高くなってしまうため、全体のバランスには気をつけましょう。
レストランの場合
レストランの原価率は30%を超えてしまう場合が多いです。理由としてはレストランは時間をかけて食事をすることを目的とするため、フードメニューが中心となりメニューの幅広さが求められるからです。また、厨房やフロアの配膳スタッフなど各所にスタッフが必要になるため、人件費も他の業態よりも高くなってしまいます。レストラン経営で原価率を抑えるためには、ドリンクメニューの比率を上げ、フードメニューの中でも原価率を変えて利益を確保できるメニューも取り入れるなどの工夫が必要になってきます。
居酒屋・バーの場合
居酒屋やバーの原価率は30~35%ぐらいと言われています。ドリンクがメインとなる業態ですので比較的原価率は低く抑えられそうですが、生ビールはドリンクのなかでも原価が高く、フードメニューでもお刺身などがあると原価率は高くなってしまいます。また、営業時間が夜ということもあり人件費も比較的高いと言えます。原価が低く抑えられるドリンクメニューも充実させ、またお酒が進むようなフードメニューを考案することがポイントとなってきますね。
原価率を抑える方法
食材のロスを減らす・食材の使用量を決める
食材のロスを減らすことは、原価率を抑えるためにも重要なポイントです。適切な量で食材を仕入れること、また仕入れている食材の種類にも着目してみましょう。多くの種類の食材を仕入れて、使用頻度が低く使い切れずに余らせてしまっていないでしょうか?食材の種類を減らすことで、ひとつの食材に対する使用頻度を高めてロスを減らすことができます。また、余らせがちな食材を使ったメニューを考案することで、食材の有効活用にもなります。
逆に、メニューに対して使用する食材の量を守ることも原価率を抑えることに繋がります。使用する分量を決めることで食材の無駄使いを防げますね。
メニューの価格を考える
ここまででも解説をしてきましたが、すべてのメニューを原価率30%に統一する必要はありません。お店が力を入れたい看板メニューが原価率30%を超えてしまうようであれば、原価率を低くできるメニューを取り入れたり、食事とあわせて注文してもらえるドリンクメニューを用意したりと、メニュー全体で原価率を考えメリハリをつけることが大切です。原価率が高いけど集客にも繋がるようなメニューと、原価率を低く利益を確保できるメニューのバランスをとることがポイントです。また、他店との差別化をはかるために安易に価格を下げてしまうと利益を得ることができず、経営が苦しくなってしまいます。価格を下げる以外にも丁寧なサービス、居心地の良いお店作り、こだわりのコンセプトなどからもお店の強みはだせます。価格自体を安くしてしまうと原価率は高くなってしまいます。価格以外の面でも企業努力をして利益率をアップさせたいですね。
適切な食材管理をする
「食材のロスを減らす・食材の使用量を決める」にも類似しますが、食材の在庫を管理することは食材のロスの防止にも繋がり、原価率を抑えることになります。定期的な棚卸で現状の食材の量を把握し、必要な分量の仕入れを行うことで食材のロスを減らせます。また、食材はどうしても時間が経つと傷んだり腐ってしまうため、効率的に食材を使用して使い切ることが大切です。食材を腐らせないためにも、そもそもの仕入れ量を減らすという対策もできます。在庫管理を徹底して仕入れ量を調整し、、早めに使用しなければいけない食材があれば機転を利かせて使い切るなど、効率的に食材を使いましょう。
原価率よりも「粗利率」が大事?
「粗利率」とは?
ここまで原価率に着目してきましたが、実際に利益を得るためには原価率にだけ気を付ければいいというわけではありません。そこで考えていきたいのが「粗利率」についてです。まず、売上から原価を引いたものを「粗利益」といいます。この粗利益が売り上げの何%にあたるかを計算したものを「粗利率」といいます。
「粗利率」を知ることで得られること
飲食店を経営していくうえで、どれだけ利益が得られるのかを把握することが重要になってきます。そこで、売上に対して食材費(原価)がどれだけかかっているか比較をし粗利率を知ることで、商品を提供することで得られる利益の目安にすることができます。実際の営業利益はさらにここから人件費、家賃、光熱費などを引いたものになりますが、これらは大きく変動するものではないので、おおよその利益が予想できますね。また、これまでにも説明してきたように、販売価格を設定する際には食材の原価だけでなく、FLコストを考えたりと全体でのバランスが重要になってきます。そのため原価率を下げることだけではなく、粗利率との比率を考えて価格設定をしましょう。得られる利益を予想しながら価格を設定するためにも、原価率だけではなく粗利率にも着目をしておきたいですね。
まとめ
今回は原価率から粗利率にも触れ、飲食店でメニューの価格設定をする際のポイントも含めて解説してきました。材料費にあたる原価率を抑えて利益を上げたいところではありますが、原価を安くすることだけを考えるのはなかなか難しい問題ですよね。食材のロスを減らすという努力はもちろん、原価だけでなく人件費やメニュー全体とのバランスを考えることで利益をアップさせることは可能になります。原価率に加え粗利率とのバランスも考え、自店の収益を意識して価格設定を行いましょう。これから開業する方も、利益アップに伸び悩んでいる方も、今一度価格設定を見直してみませんか?
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