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#38 店舗から飲食店へ用途変更する際の注意点を解説!

飲食店の開業を検討する際に、物件選びは重要です。既存のテナント、物件を借りて開店する場合では、状況に応じて物件の用途変更をする必要があります。ここではそもそも用途変更とはなんなのか、また用途変更をする際に注意した方が良いポイントなどを解説していきます。

用途変更とは

用途変更とは、建物を、建築時に申請している使い道とは別の使い方をする場合、それを変更する行政上の手続きの事です。新築時に、建物は「事務所」「物販店舗」「居住用」などの用途を行政に申請しています。その建物を使う人間が、「用途を特殊建築物に変更する場合」「用途を変更する面積が200㎡を超える場合」の二つの条件を満たした時に、用途変更の確認申請が必要となってきます。テナントを借りて、飲食店を新たに開業しようとする場合、飲食店という業態は、一つ目の特殊建築物に当てはまるので、飲食店として使う場所の面積が200㎡を超えるかどうかという点が、用途変更の確認申請が、必要となるか否かの分岐点となります。ちなみに、以前飲食店として使われていたテナントを、飲食店として使うために新しく借りるといった、同じような業種間での変更の場合には用途変更は不要です。

用途変更が必要な理由

建物を、どのように使うかによって、求められる安全基準は異なります。例えば、決められた人しか出入りしない事務所と、不特定多数のお客様が出入りし、更に、厨房で料理などをする飲食店舗では、どういった安全施策をとればいいかが全く変わってくることを、想像するのは難しい事ではないでしょう。また、安全面の問題だけではなく、採光や温度、湿度、通風等が、以前の用途では問題がなくても、飲食店としては不十分で、お客様にストレスを与えてしまう結果に繋がってしまう事もあります。お客様の安全を確保し、快適な時間を過ごしていただく下ごしらえをするこれが、用途変更が必要な理由です。もし、用途変更が必要であるにもかかわらず、用途変更の手続きを怠っていた場合。建築基準法で最大で懲役3年以下または300万円以下の罰金と定められています。さらに、何かしら被害が生じた際、刑事責任を問われたり民事訴訟につながったりする可能性もあります。更に、建物の安全基準が満たされていないと判断された場合、営業許可が下りない場合もあります。取り返しのつかないことになる前に、やるべき手続きはきちんとやっておくことをお勧めします。

テナントの用途変更、手続き内容は?どんな流れでどれくらいかかる?

用途変更の手続きの流れを大まかに解説します。手続きは、書類申請だけで済む場合は少なく、ほとんどのケースでは、用途ごとに設けられた建築基準法・消防法・条例など、法令をクリアできるように改修工事を行う必要があります。予想外の工事やトラブルでオープンに間に合わないといった事態も想定されます、余裕を持ったスケジュールを心がけましょう。

用途変更の手続き① 書類と図面の確認

申請に必要な書類や図面(確認済証、検査済証、消防適合証明書、確認申請図、竣工図、構造計算書など)が揃っているかを確認します。

検査済証について

検査済証は、建物の完成時に公布されますが、テナントを借りる場合、それが存在しないということもあり得ます。その場合、建築確認書に基づいた調査を一級建築士もしくは建築基準適合判定資格者に依頼することで、検査済証と同等の報告書を発行してもらうことができ、代用することができます。建築確認書まで紛失していた場合でも、台帳記載事項照明で代用することができます。

用途変更の手続き② 法令や条例の確認

新築時から変わった部分がないか法令や条例と図面と照合し、用途変更する特殊建築物がそれに適合しているか、「既存不適格」に該当しないかどうかのチェックをします。

既存不適格」について

新築時には当時の法律や条例の基準を満たしていたが、その後の改正によって、現在の法律や条例を満たしていない状態の建物のこと「既存不適格」と呼びます。現状のまま使い続けることは違法ではありませんが、用途変更を行う場合には現在の法律や条例の基準をクリアする必要があります。

用途変更の手続き③ 申請書や図面の作成

用途変更の実績がある工務店や、建築事務所に依頼し、行政や関連機関を交えて用途変更のプランや、工事をする箇所や内容を確定させ、図面を作成し、申請を行います。

用途変更の手続き④ 工事着工

用途変更の確認済証が交付された後、着工します。

用途変更の手続き⑤ 完了検査

用途変更に関わる工事が終わり次第、工事完了届を建築主事に届け出た後、必要に応じて消防署や保健所などの検査を入れ、それが終わると用途変更は終了となります。

費用はどれくらいかかる?

必要な改修工事の内容や、建物の状態、書類がどれくらい揃っているか等、かかる費用はケースによって様々です。数十万円程度の用途変更する区画だけの工事で済む場合もあれば、建物に違反が見つかり、全体的な工事に発展し、数百万円規模のお金が必要な場合も少なくありません。高額になりがちなケースとしては「書類の紛失が多い」「書類と異なる使い方や造作が発覚した」「地下階や中層・高層階(低層階であるほど費用が抑えられる傾向があります)」といったものが挙げられます。また、用途変更に関しては、建築士の資格を持っていなくても設計ができるので、必ずしも建築士に依頼せずとも、この手続きを行う事ができます。そのため、全てをテナントオーナーがやることで費用を浮かせると言った方法もありますが、やはり複雑なうえに、建物の安全に関わることなので、万全を期して、最初から建築士に依頼することをお勧めします。建築士の探し方がわからないという方は、店舗の内装業者に相談して、建築士を紹介してもらうと良いでしょう。

飲食店へ用途変更する際の注意点

用途変更200㎡以下でも注意

前述の通り、用途を変更する面積が200㎡を越えない場合は用途変更の確認申請が不要となっています。しかし、合算して200㎡を超える場合は確認申請が必要となります。例えば1階部分で150㎡の用途変更、2階部分で150㎡の用途変更を行う場合、合算すると200㎡を越えてしまうため確認申請が必要となります。また、同時に行う用途変更だけではなく、過去にその建物内で用途変更した面積も合算されるので注意が必要です。具体例を挙げると300㎡の募集区画があり、オフィス用として貸し出す予定が、入居者が決まらなかったためにフロアを分割し150㎡をカフェを営むテナントに貸し出しました。この場合、用途変更して使用する面積は200㎡以下なので確認申請は不要です。しかし、その半年後、残りの150㎡の区画にラーメン店が入居するとなった場合には、「飲食店」の用途に使われる面積が合計300㎡になるため、用途変更の確認申請手続きが必要になります。

用途変更の確認申請は不要でも、法令遵守と適切な維持管理が必要

用途変更の確認申請が不要だからと言っても、建築基準法や消防法に適合しなくていいというわけではありません。更に、その地域や、自治体独自の条例が絡んでくることも少なくないので、行政などに相談するか、建築士に操作を依頼して、用途に応じた基準や法令がクリアできているのか確認し、適切にその建物を維持管理していく必要があると言えるでしょう。

消防への届出を忘れずに

準備する書類や工事計画などの手続きに追われるうちに、消防への届出を忘れてしまうことがあります。用途変更を行う場合、確認申請は必要なくても、消防への届出は必要となります。事務所などとして使用されていた建物を、飲食店に用途変更する場合、防火対策や消防設備の設置、避難経路など、これまでとは異なる消防設備を整えて、その為の工事を行う必要があります。届出に必要な書類を準備すればよいというだけではなく、場合によっては防災管理者の選任を求められることもあるため、そのような事を念頭に置いた上で準備を進める事をお勧めします。

飲食店への用途変更に適した物件

飲食店として用途変更する場合に、用途規模が200㎡以下の物件であれば確認申請をする必要がないため、業態として、あまり広さを必要としないのであれば、用途規模200㎡以下の物件は、用途変更にかかる費用を大幅に抑える事が可能な、適した物件と言えるでしょう。逆に、用途規模200㎡を超えるスペースを、必要とする業態の場合は、検査済証が手元に残っている物件であれば、確認申請の工数や費用を大幅に削減できます。また、飲食店への用途変更には、調理等で火を扱う場面が想定されるので、耐火・防火設備の必要性があります。あらかじめ自動火災報知器や消火器などの防火設備が搭載されている物件であれば、飲食店として改修する際の費用を安く抑えることができます。これらの、設備や書類を後から用意する必要がない物件は用途変更に適した物件と言えるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。いままで飲食店として使われていなかったテナントを利用して飲食店を開業する場合、面積に応じて用途変更の確認申請が必要となる場合があります。用途変更には必要書類が無ければ代用となるものを作り直したり、大規模な工事計画を立てたりと、ケースバイケースで様々な作業が必要となってくるので、制度上はテナントオーナーだけで行う事も可能ですが、建築士の方を頼り、万全の態勢で臨んだほうが良いようです。費用がかさみがちな用途変更ですが適した物件を選ぶことでその費用を抑えることができます。また、用途変更の確認申請が必要ではないと思える場合でも、同じ建物内で、過去も含めた合算をすると必要となってくる場合もあるので注意が必要です。

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