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#47 最近話題のインボイス制度とは?その影響や対策を解説

2023年10月には、インボイス制度が導入されます。取引内容や消費税率など、必要な情報を記載した請求書を発行し、保存しておくことを義務付ける制度です。この制度は具体的にに、何をしなければならない制度なのか、どんな事業形態に影響があるのか。また飲食店への影響はどういったものなのか、制度が始まる前にしておいた方がいい準備などについて今回は解説していきます。

インボイス制度とは

まず、そもそもインボイス制度とは何?という所から解説していきます。インボイス制度とは、適格請求書の交付や保存に関する制度で、この適格請求書の事を、インボイスと言います。正式には適格請求書保存方式という名前で、2023年10月に導入されます。

適格請求書(インボイス)とは何か

まず、適格請求書(インボイス)は適格請求書発行事業者だけしか発行を行う事ができません。そして適格請求書(インボイス)とは、売り手が、買い手に対して適用税率や消費税額等を正確に伝えるための、国税庁で定められている以下の事項を満たしている書類の事です:
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
⑤消費税額等(端数処理は一請求書当たり、税率ごとに1回ずつ)
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
(国税庁「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます(リーフレット)」から引用)
そして、この中でも①で示されている登録番号は、この適格請求書(インボイス)を発行しているのが適格請求書発行事業者だという証明の為、とても重要なものとなります。

インボイス制度で気を付けなければいけない3つのポイント

適格請求書(インボイス)を発行できるのは適格請求書発行事業者だけ

適格請求書を発行したいと思った場合、適格請求書発行事業者にならなければ、発行することはできません。適格請求書発行事業者ではない場合は、登録する必要があります。税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して登録申請をするという手順を踏みましょう。そして、登録申請は課税事業者でなければ行うことはできません。現在免税事業者で、適格請求書発行事業者として登録を行いたい場合は、登録申請書に加えて「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要があります。

消費税と地方消費税の申告義務が生まれる

現在、課税売上高1000万円以下の事業者は、免税事業者として、消費税及び地方消費税の申告義務はありません。しかし、インボイス制度によって、適格請求書発行事業者に登録をすると、その過程で課税事業者になる必要があり、課税売上高1000万円以下の事業者であっても消費税及び地方消費税の申告と、納税義務が生まれます

仕入税額の控除は、適格請求書発行事業者同士でだけ、行う事ができる

消費税の仕入税額控除は、適格請求書発行事業者だけが、取引先である適格請求書発行事業者が発行する適格請求書(インボイス)等の保存を要件にして、行うことができます。つまり、取引先が免税事業者など適格請求書発行事業者でない場合には、受け取った請求書等で仕入税額控除はできません。

インボイス制度導入の目的

現在、国は厳しい財政状況にあり、それを改善するために、税収の増加を狙ってインボイス制度の導入が決まりました。インボイス制度導入の目的とされているのは益税の排除と、複数税率(軽減税率)対応という二点です。

益税の排除

益税とは、脱税とは違い、現行の制度で供されている事業者の利益です。これを排除することにより、制度上、事業者の手元に残っていた消費税を国庫に吸い上げる事により、税収を増やそうというのが狙いです。益税は以下の二つの制度によって生じます。

免税事業者制度

消費税の仕組みでは、消費者が支払った消費税がそのまま国庫に入るのではなく、取引の各段階で事業者が消費者に代わって国庫に納める方式となっています。しかし、売上高が1000万円以下のなどの一定の要件を満たす場合、その事業者は免税事業者となり、消費税の申告と、納税義務が発生しません。そして現行の制度では、免税事業者でも消費税込みの請求書を発行できるため、受け取った消費税はそのまま免税事業者の手元に残り益税となります。

簡易課税制度

課税売上高が5000万円以下で、一定の届出書を事前に提出している事業者が選択できる制度で、中小企業の申告・納付の事務負担を軽減するために導入された制度です。消費税は、売上に係る消費税から、仕入れなどに係る消費税を差し引いて申告・納付することが基本です(原則課税)。簡易課税制度では、消費税の「仕入控除税額」を「みなし仕入率」によって計算し、簡易的に算出することができます。例えば、実際の仕入率が70%である小売業(みなし仕入れ率が80%)の場合、原則課税と簡易課税により消費税額の違いが発生し、その10%分の差額で残った金額が、益税となります。

複数税率(軽減税率)対応

インボイス方式導入のもう一つの目的は、複数(軽減)税率への対応です。申告実務をするうえで、すべての品目が同じ消費税率であれば、割戻し計算を使い、申告する必要のある税額は比較的簡単に計算できます。しかし、複数(軽減)軽減税率が導入され、消費税の計算がとても複雑になりました。しかし異なる税率ごとに取引額や税額がきちんと記載されている適格請求書(インボイス)があれば、経理や申告業務が簡単になり、計算ミスの防止などにつながります。

インボイス制度導入での影響

課税事業者の場合

現在の制度では、課税事業者は免税事業者からの仕入れであっても、仕入れ税額控除を使用できます。しかし、インボイス制度上では免税事業者からの仕入れは仕入れ税額控除を利用できません。例えば、1000円の商品を10%の消費税で免税事業者から仕入れた場合、今までは100円を仕入れ税額控除することにより、国庫に納める消費税から100円引いてもらう事ができていましたが、これからはこの消費税額100円を、課税事業者が全て負担することになり、資金繰りの悪化や、利益率の悪化といった事に繋がる可能性があります

免税事業者の場合

免税事業者はインボイス制度が導入されると、適格請求書(インボイス)を発行する事ができません。そして、課税事業者の買い手が仕入れ税額控除を受けるためには適格請求書(インボイス)が必要になります。消費税を納める必要のある課税事業者はできるだけ納付額を抑えたいと考えるので、取引先には仕入税額控除のできる適格請求書の発行をできるだけ求めることになるでしょうし、もし免税事業者であって適格請求書の発行ができないのであれば、今までと同じ条件では取引をしたくないと考える事業者も出てくるでしょう。つまり、今まで受けていた仕事の値下げや、他の適格請求書が発行できる事業者への鞍替えなどにより、仕事の減少といった影響が出てくる可能性があります。また、インボイス制度導入を機に課税事業者となり、適格請求書発行事業者になろうとしても、消費税の申告や納税に関する事務手続きの煩雑化や、今まで益税込みで回っていた事業が消費税を納付することにより、立ちいかなくなる可能性もあります。

飲食店への影響は?

店主一人で切り盛りしているような飲食店のような個人事業主も少なくない飲食業界。免税事業者として営業している方も多いのではないかと思います。その場合の影響は前述の通りで、商品や原材料の仕入先との取引が減ったり打ち切りになったりする事が増えるかもしれません。課税事業者ならば、これも前述の通り、インボイスの交付がない取引先からの仕入分だけ消費税の負担増となります。

インボイス制度の中でのレシート

飲食店が発行するレシートは、必要な事項を記載して発行することで簡易適格請求書(インボイス)の扱いになります。簡易適格請求書(インボイス)とは「不特定多数に対して営業を行う一定の業種」が発行できる、インボイスの内容を簡略化したものです。飲食店はその業種に当てはまります。レシートを簡易インボイスとして発行する具体的な記載内容は以下のとおりです。

①インボイス発行事業者の氏名または名称および登録番号(T+13桁の法人番号または13桁の数字)
②取引年月日
③取引内容税率ごとに区分して合計した対価の額
④「税率ごとに区分した適用税率」もしくは「税率ごとに区分した消費税額等」のどちらか

免税事業者の飲食店で、消費者の中に会社の接待に店舗を利用している方がいる場合は、接待交際費を計上するために領収書やレシートをこの簡易インボイスとして利用します。「この飲食店はインボイスがもらえないから、今後はほかの店を接待に使おう」となり、収入の減少につながる可能性があるといえるでしょう。また、課税事業者の飲食店の場合においても、簡易適格請求書(インボイス)を発行するための設備投資が必要になってくるでしょう。

インボイス制度を乗り切る準備と対策

課税事業者の場合

商品の代替が可能で、同価格で製造でき、適格請求書(インボイス)の発行もできる他社があるのであれば、取引先をその事業者に変更するという方法がります。条件に合う課税事業者がいない、あるいは長年の取引関係から切り替えが難しい場合は、当該の免税事業者に取引価格の値下げを提案するのもひとつの手段としてあるでしょう。

免税事業者の場合

免税事業者の対応としてはインボイス制度に対応するため、課税事業者になり適格請求書発行事業者の届け出を出すことがやはり、インボイス制度を乗り切るための対策になってきます。その際、複雑な事務手続きの増加は免れませんので、会計ソフトやクラウドサービスを導入するなど、IT化を進める事で、少しでもその手間を減らすことをお勧めします。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回導入されることになった複雑なインボイス制度。全事業者、特に免税事業者にはとても大きな影響があり、対応を余儀なくされる方も多いことと思います。その上で気を付けなければいけないポイントや、とりうる対策などを今回解説させていただきました。理解を深め、この制度によって受ける悪い影響を最小限にとどめるお手伝いができれば幸いと思います。

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