現在日本において、外国人労働者のニーズが高まりつつあります。その背景には飲食業界でも深刻となっている人手不足や、インバウンド対策としての需要がうかがえます。外国人雇用は拡大されており、2019年より新たな受け入れ制度も始まりました。今回は外国人を雇用するにあたり必要な在留資格に関する知識や、外国人雇用のメリット・注意点に関してまとめていきたいと思います。外国からの受け入れや、日本に在住している外国人や留学生などの雇用、労働形態による違いなども詳しく解説していきます。
目次
外国人スタッフを雇用するメリット
労働力の確保
少子高齢化が進む日本の労働人口は減り続けており、飲食業界も人材不足が問題となっています。そのため海外から仕事を求めて来日する外国人を雇用することで、新たな労働力の確保ができます。外国人労働者の年齢層は若者が多く、日本語習得にも積極的で働くことに対しても意欲的な傾向があります。若くてモチベーションが高いスタッフがいることは、お店にとっても心強いですね。
外国人客への対応ができる
外国人スタッフを雇用することは、日本人スタッフへが普段触れることのない異文化を理解する機会となります。外国人スタッフとコミュニケーションをとるために外国語を学んだり、文化や習慣への理解を深めることができます。また、一緒に働くことで日本人スタッフは外国人客に対する接客についても学ぶことができ、スキルを身に着けることができます。
外国人スタッフのモチベーションの高さは日本人スタッフにとても良い影響を与え、異文化を受け入れられるような、活力にあふれたお店になるでしょう。
海外進出に有効
もしも将来海外進出を検討しているならば、出店を予定している国の人材を雇用することは大きなメリットとなり得ます。海外出店の際は現地の風土、文化、トレンドに関する情報が必須となりますが、出身スタッフがいることで理解することができるため、強力な味方といえるでしょう。
外国人の「在留資格」とは?
「在留資格」とは
「在留資格」とは、外国人が日本に滞在して活動するために必要な法的資格です。そのため外国人が日本で働くためには在留資格を保有しなければなりません。在留資格には以下のようなものがあり、就労ができないものや、制限がかかるものもあります。
就労が認められている在留資格
定住者、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者
就労が認められているが、制限がある在留資格
外交、公用、教育、医療、企業内転筋、技能 等
これらは職種、業種、勤務内容などの限られた範囲内であれば就労可能です。
就労が認められない在留資格
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在
「資格外活動許可」を得れば、留学・家族滞在であれば定められた制限の範囲内で就労が可能です。
「資格外活動許可」について
「就労が認められない在留資格」の説明でも触れましたが、「資格外活動許可」について説明をします。
資格外活動許可とは、保有している在留資格で認められている活動以外で収入を得ることを許可するものです。在留資格には就労が認められていないものや制限があるものがありますが、資格外活動許可を得ることでアルバイトができるようになります。しかし、就労が1週間に28時間以内であること(合計での就労時間のため掛け持ちに注意)、風俗営業は許可されないことなど注意が必要です。先ほど就労が認められていない在留資格に留学生を挙げましたが、このように資格外活動許可を得ていればアルバイトで雇用することは可能になります。
飲食店で雇用できる在留資格は?
ここでは飲食店で雇用することが可能な在留資格について、雇用形態別に説明していきます。
正社員の場合
身分系の在留資格(定住者、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者)
労働時間や滞在期間など制限がなく就労可能です。
技能の在留資格
技能の在留資格は経験を積んで得た技能を就労に活かす在留資格で、調理師として雇用することが可能です。しかし、技能の在留資格を取得するためには、調理師として10年以上の実務経験が必要です。また、専門性を活かす資格となっているため、調理補助、掃除、洗い場、接客、レジ等の業務での雇用は許可されていません。
特定活動46号
高い日本語能力を活かして就労することを要件とした在留資格で、通訳を兼ねた接客や調理業務等の就労が可能です。日本の大学、または大学院を卒業し、日本語能力試験N1もしくはビジネス日本語能力テスト480点以上取得しているか、もしくは大学・大学院において日本語を専攻していることが資格取得の条件です。あくまでも日本語能力活用した就労が目的のため、単純労働のみは認められていません。
この在留資格は、日本の大学を卒業した高い日本語能力を持つ留学生の就職支援といった意図もあり設けられました。
特定技能1号
特定技能は2019年4月に新しく設けられた在留資格で、人材不足が問題とされている業種に外国人を受け入れて、解決に導くことを目的としています。外食業分野も対象となっており、特定技能1号のみが受け入れ可能となっています。業務に関しては調理や接客等、飲食店の業務全般に従事することができます。資格の取得には規定の日本語能力の試験と、技能試験の合格が条件となっています。しかし、特定技能での在留期間は5年が最長となっているため雇用の際は注意が必要です。
アルバイトの場合
身分系の在留資格(定住者、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者)
正社員と同様に制限なし
留学生/家族滞在
留学生、家族滞在ともに資格外活動許可を得れば就労可能です。しかし、「『資格外活動許可』について」で説明したように、就労時間に制限があります。留学生については、長期休暇の場合は1日に8時間以内、週40時間まで可能となります。
特定活動
特定活動のワーキングホリデーであれば、労働時間の制限もなく最長1年間の就労が可能です。パスポートに添付されている指定書にワーキングホリデーの記載があるか確認をしましょう。
外国人の採用方法
募集
まずは人材を募集するところからスタートです。あらゆる手段があるため、費用の面なども検討しながら募集媒体を決めましょう。一つに絞らず、複数試すことでより多くの求職者に募集をかけることができます。
SNS
SNSは世界各国にユーザーがおり、求人情報を得る手段として活用している外国人もいるでしょう。SNSで募集要項を発信・拡散することで、求職中の外国人の目に留まる可能性があります。
学校との連携
留学生が在籍する学校と連携して求人情報発信してもらう手段もあります。日本語学校等、より多くの外国人学生にピンポイントで募集をかけることができますね。
求人広告
費用が発生してしまいますが、求人広告会社に依頼をして求人媒体で宣伝してもらうこともできます。外国人専門の求人サイトを利用するのも良いでしょう。
人材紹介会社
人材を求めている企業と求職者をマッチングさせてくれる、人材紹介会社に登録する方法もあります。紹介手数料がかかってしまいますが、募集内容に合った求職者を紹介してくれるというメリットがあります。
書類・面接で選考
求職者が集まったら、書類や面接で選考を実施し、適切な人材を探します。書類選考では基本的な履歴書の内容の確認と共に、在留カードや資格、実務経験等の重要な情報についても確認しましょう。在留資格や在留期間の確認は必ず行いましょう。面接においては人柄やコミュニケーション能力など、自店で雇用する人材として適しているかどうかの判断材料としましょう。
雇用契約手続き
採用する人材が決まったら内定を伝え、雇用手続きに進みます。その際に雇用契約書を作成することとなりますが、採用者の母国語や簡単な日本語で用意ができればより良いでしょう。契約内容が理解しやすく、トラブルを防ぐためにもわかりやすく伝えることを意識しましょう。
在留資格申請
雇用契約の手続きが済んだら、次は在留資格の申請に移ります。国内での採用と国外からの採用では申請が異なるため、分けて説明をしたいと思います。いずれも
国内での採用
留学生が卒業後に就職する場合や、外国人が転職して在留資格の変更が必要となると、出入国在留管理局で在留資格の変更手続きを行います。留学生は学校を卒業すれば特定技能など別の在留資格へ変更になります。このように卒業や転職によって在留資格が変更になる場合は、在留資格変更許可申請が必要です。また、特定技能の在留資格を持つ者は、在留資格が変更にならなくても在留資格変更許可申請を届け出なければなりません。さらに、在留期間に期限があり更新が必要な場合も在留期間の更新許可申請を行います。なお、身分系の在留資格や資格外活動許可を持つ場合においては申請不要となっています。
国外から採用
海外から外国人を日本に呼び採用する場合は、在留資格認定証明書を出入国在留管理局に申請する必要があります。交付がされたら、外国人労働者がビザの申請に必要になるため郵送をしておきます。交付までにかなりの時間を要するので注意が必要です。
雇用開始
在留資格に関する必要な手続きを終え、国内採用者は在留カードが交付され、国外採用者はビザの申請が通り入国できれば就労が開始されます。
雇用開始の際には、日本人と同様に社会保険・労働保険の手続きが必要になります。
正社員
健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入が必要。
アルバイト(以下のように、労働時間によって異なります)
・健康保険・厚生年金保険
週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の場合、健康保険と厚生年金保険の加入が必要。(特定適用事業所の場合は別途要件あり)
・雇用保険
週の所定労働時間が 20 時間以上の場合加入が必要。ただし、昼間部の学生の場合は雇用保険の加入の対象とはなりません。留学生が「資格外活動の許可」を得て働く場合は、 通常、健康保険、厚生年金保険、に関しても加入の対象とはなりません。また、ワーキングホリデーにおいても雇用保険の加入の対象とはなりません。 雇用保険に加入しない場合は、ハローワークに外国人雇用状況の届け出を提出する必要があります。
・労災保険
全ての労働者に適用されます。
外国人を雇用する際の注意点
雇用の手続き
外国人を雇用する際は、日本人とは手続きが異なるため注意が必要です。今回の記事で何度も触れていますが、在留カードの記載内容の確認は必ず行いましょう。在留資格の種別、就労制限の有無、在留期間など、雇用が可能かどうかを確かめる必要があります。本来では就労できる資格がなかったり、許可されていない業務に従事させてしまうと、不法就労助長罪によって処罰の対象となってしまいます。また、持っている在留資格によって申請が異なったり、場合によっては申請が不許可となることもあるため、申請手続きは慎重に行いましょう。もし不安であれば、行政書士や手続きのフォローもしている人材紹介会社など、プロに頼ることも手段です。
日本語や接客・マナーに関する育成
外国人労働者において問題となるのは言語に関してでしょう。ある程度の日本語は理解できても、業務で日本語を使いこなし、接客もできるようになるまでには時間を要します。面接の際には、日本語能力やコミュニケーション能力を確認しておきましょう。また、業務内容や日本における接客やマナーについても教育する必要があります。外国人スタッフの育成には時間と手間がかかってしまいますが、日本人スタッフで協力して取り組みましょう。
文化や価値観の違いを理解する
国が異なれば、文化や価値観、習慣なども異なります。雇用する外国人の母国に関して理解ができていないと、思わぬトラブルや離職に繋がってしまうかもしれません。日本のマナーや習慣について理解してもらうとともに、外国人スタッフの文化や習慣なども尊重し、双方が気持ちよく働ける労働環境を目指しましょう。
まとめ
今回は外国人の雇用に関して解説をしてきましたが、在留資格や雇用に関する手続きの申請など、少し難しく感じる点もあったかと思います。しかしながら、外国人雇用は昨今の飲食業界の人材不足問題の解消に繋がるとされており、入管法も改正されて外国人の受け入れは拡大しています。仕事を求めて来日する外国人は働くことに一生懸命で、留学生も日本語の習得に熱心に取り組んでいます。もちろん、業務上で日本語を活用しコミュニケーションをとれるようになるには、時間をかけて日本人スタッフの教育が必要になります。しかしながら、インバウンド対策が提唱されている今、外国人労働者が日本の飲食店と海外のお客様とを繋ぐ存在ともなってくれます。雇用にあたり在留資格の確認や知識、申請には十分な注意が必要ですが、外国人雇用はお店にとってのメリットも大きいです。人手不足にお悩みや、インバウンド対策を検討されているならば、彼らの力を頼ってみませんか?
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